日本製化粧品はアメリカ市場でも品質への評価が高く、越境ECを中心に輸出を検討する事業者が増えています。一方で、アメリカには2022年に成立したMoCRA(化粧品規制近代化法)という新しい規制があり、内容を正しく理解しないまま輸出を進めると手続きの手戻りが発生します。
本記事では、年間売上高が一定基準以下の事業者に適用される免除制度を中心に、実務で確認すべきポイントを整理します。
化粧品をアメリカへ輸出する前に知っておきたい基礎知識
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 一般化粧品にFDA登録は義務ではない
- 2022年MoCRA施行で何が変わったか
- 輸出を検討する化粧品事業者が増えている背景
アメリカでの化粧品規制は、医薬品ほど厳格ではないものの、2022年のMoCRA成立を境に大きく変わりました。輸出を検討する際は、旧来の「登録不要」という認識のままでは対応できない部分があるため、まず全体像を押さえておく必要があります。
一般化粧品にFDA登録は義務ではない
アメリカでは、化粧品そのものの販売許可を事前にFDAから取得する制度はありません。医薬品のような承認プロセスは存在せず、事業者の自己責任のもとで安全な製品を流通させる仕組みが基本になっています。
ただし、これは「何も届け出なくてよい」という意味ではありません。MoCRA施行後は、製造や加工を行う施設そのものについて登録義務が生じる場合があるため、製品単位の許可制ではなく施設単位の登録制という違いを理解しておく必要があります。
2022年MoCRA施行で何が変わったか
MoCRAは、化粧品を製造または加工する施設について、FDAへの登録と製品リストの提出を義務づけました。対象となる施設は2024年7月1日までの対応が求められ、電子ポータルを通じた登録と、毎年の更新が必要です。これにより、これまで任意だった情報提供が一部義務化され、成分や製造拠点の透明性が高まりました。
輸出を計画する事業者にとっては、契約書や販路開拓だけでなく、この登録義務の有無を早い段階で確認することが重要になります。
輸出を検討する化粧品事業者が増えている背景
円安の影響もあり、越境ECを通じたアメリカ向け販売は右肩上がりで推移しています。特にAmazonなどのプラットフォームを活用すれば、大手商社を介さずに中小の化粧品ブランドでも直接アメリカの消費者にアプローチできるようになりました。
この流れの中で、規制対応をどう進めるかが輸出可否を左右する実務課題として浮上しています。

内部リンク
https://ai-cosmetic.co.jp/oemodm/
MoCRA(化粧品規制近代化法)とは何か
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 施設登録(Facility Registration)の概要
- 製品リスト(Product Listing)の概要
- 違反した場合のリスク
MoCRAは、施設登録と製品リストという二つの柱で構成されています。どちらも化粧品を製造・加工する事業者に課された新しい義務であり、輸出前提の事業計画を立てるうえで欠かせない知識です。
施設登録(Facility Registration)の概要
施設登録は、化粧品を製造または加工する拠点をFDAに届け出る手続きです。登録情報に変更があった場合は60日以内の更新、また2年ごとの登録更新も求められます。これは製品ごとの許可ではなく施設単位の登録である点に注意が必要です。
海外の製造施設であっても、アメリカ市場向けに製品を流通させる場合は対象になり得るため、OEM先の工場が登録対象かどうかを事前に確認しておくと手続きの遅延を防げます。
製品リスト(Product Listing)の概要
製品リストは、アメリカ市場で流通する化粧品ごとに成分やカテゴリーなどの情報をFDAへ提出する制度です。責任者(Responsible Person)として登録された事業者が、毎年の更新義務を負います。
これにより、成分情報の透明性が高まる一方で、処方内容を正確に整理しておく実務負担も増えました。OEM先と連携し、成分表の英語表記や規格書を早い段階で準備しておくことが望まれます。
違反した場合のリスク
登録義務がある施設が未登録のまま製品を流通させた場合、輸入時の差し止めや販売停止といった措置につながる可能性があります。特に、FDAが安全性への懸念を認めた場合は登録の停止も想定されており、これは事実上その施設からの製品供給が止まることを意味します。
輸出契約を結ぶ前に、自社またはOEM先の登録状況を確認しておくことが、取引先との信頼関係を保つうえでも重要です。

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年間売上1億5千万円以下なら知っておきたい「小規模事業者免除」
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 免除基準は「年間売上100万ドル未満」の3年平均
- 合計ではなく平均という誤解しやすいポイント
- 免除されるのは登録義務であって、安全基準ではない
MoCRAには中小事業者への配慮として、一定規模以下の事業者を施設登録や製品リストの義務から外す免除制度が設けられています。この基準を正しく理解しておくことで、過度に身構える必要がないケースも見えてきます。
免除基準は「年間売上100万ドル未満」の3年平均
小規模事業者の免除基準は、過去3年間のアメリカ国内での化粧品売上高の平均が100万ドル未満(インフレ調整あり)であることです。1ドル160円前後で計算すると、日本円でおよそ1億5千万円台が目安になります。
多くの中小ブランドやOEM取引を行う事業者にとっては、この基準を下回るケースも少なくありません。まずは自社のアメリカ向け売上実績を確認し、基準との距離を把握することが最初のステップになります。
合計ではなく平均という誤解しやすいポイント
この基準でよく誤解されるのが、3年間の合計額と平均額の違いです。基準となるのは3年間を平均した年間売上高であり、3年分をすべて合計して100万ドル未満にする必要はありません。
仮に年ごとの売上に変動があっても、3年間の平均で判定される仕組みのため、単年での急な伸びだけで基準を超えたと判断するのは早計です。正確な平均値の算出方法は、契約や申告の場面で誤解を招きやすいため、社内で共有しておく価値があります。
免除されるのは登録義務であって、安全基準ではない
免除の対象になったとしても、それは施設登録と製品リストの提出義務からの免除であり、成分の安全性や表示に関する基準まで免除されるわけではありません。
禁止成分の使用や虚偽表示があれば、免除対象であってもFDAの規制対象になります。「免除=無条件で自由」という誤解は避け、あくまで手続き負担の軽減措置と捉えることが実務上のリスク管理につながります。

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免除の対象にならない化粧品もある
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- アイメイクなど目の粘膜に触れる製品
- 毛染め・パーマなど24時間以上効果が持続する製品
- 自社製品が該当するかの確認方法
小規模事業者免除には、製品カテゴリーによる例外規定があります。売上基準を満たしていても、扱う製品によっては免除の対象外になるため、事前確認が欠かせません。
アイメイクなど目の粘膜に触れる製品
通常の使用条件下で目の粘膜に触れることが想定される製品は、免除の対象から除外されています。アイライナーやマスカラなどのアイメイク製品が代表例です。
これは、目の粘膜という感受性の高い部位に触れる製品ほど、安全管理の重要性が高いと判断されているためです。該当する製品ラインを扱う事業者は、売上規模にかかわらず登録義務が発生する可能性を前提に準備を進める必要があります。
毛染め・パーマなど24時間以上効果が持続する製品
消費者自身では除去できず、24時間以上にわたって外見を変化させる効果を持つ製品も、免除の対象外とされています。ヘアカラーやパーマ剤などがこれに該当します。一時的なメイクアップと異なり、効果の持続期間が長く消費者側でのコントロールが難しい製品ほど、規制上の位置づけが厳しくなる傾向があります。
自社製品が該当するかの確認方法
自社製品が免除対象になるかどうかは、単に売上高だけでなく製品カテゴリーごとに判断する必要があります。複数のカテゴリーを扱う事業者の場合、一部の製品ラインだけが免除対象外になるケースもあるため、ライン単位での確認が現実的です。
判断に迷う場合は、FDAの公式ガイダンスを参照するか、規制対応に詳しい専門家へ相談する体制を整えておくと安心です。

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免除対象でも押さえておくべき実務ポイント
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 禁止・制限成分のチェック体制
- 有害事象記録の保管義務(3年間)
- VCRP(任意登録)を活用するメリット
免除対象になった場合でも、輸出前に確認しておくべき実務項目は残ります。手続き負担が軽減される一方で、安全管理に関する基本的な義務は継続する点を押さえておきましょう。
禁止・制限成分のチェック体制
アメリカでは、水銀化合物やクロロホルムなど、化粧品への使用が禁止または制限されている成分が定められています。日本国内向けの処方をそのままアメリカへ持ち込むと、使用不可の成分が含まれているケースもあるため、輸出前の処方チェックは欠かせません。
OEM先と連携し、原料ごとの規格書をもとに成分の適合性を確認する体制を構築しておくことが、輸入拒否などのトラブルを防ぐ実務上の基本になります。
有害事象記録の保管義務(3年間)
免除対象の事業者であっても、消費者から報告された有害事象については記録を作成し、3年間保管する義務があります。これは製品の安全性を事後的に検証できる体制を維持するための規定です。輸出開始時点から記録フォーマットを整えておくことで、万が一の問い合わせやクレーム対応にも迅速に対応できます。
VCRP(任意登録)を活用するメリット
VCRP(化粧品自主登録プログラム)は、免除対象の事業者でも任意で利用できる登録制度です。義務ではありませんが、製造拠点や取扱製品の情報を自主的に登録しておくことで、FDAとのコミュニケーションが円滑になり、規制対応への姿勢を示すことにもつながります。
将来的に売上が免除基準を超える見込みがある事業者にとっては、早めに登録実務に慣れておく機会としても活用できます。
化粧品の輸出を始めるにあたり、規制対応と並行して製造体制の整備も重要な検討事項です。処方設計から容器選定まで一貫してサポートを受けたい場合は、専門のOEMパートナーへの相談も選択肢のひとつです。

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化粧品を実際にアメリカへ輸出するときの流れ
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 必要書類(商業送り状・パッキングリスト・原産地証明書)
- 通関・輸送でつまずきやすいポイント
- 小ロットからのスタートでも輸出は可能
規制対応の理解が進んだら、次は実際の輸出実務です。書類準備から通関までの流れを事前に把握しておくことで、初回輸出時のトラブルを減らせます。
必要書類(商業送り状・パッキングリスト・原産地証明書)
化粧品の輸出には、取引内容と価格を示す商業送り状、梱包内容をまとめたパッキングリスト、製造国を証明する原産地証明書が基本書類として必要です。これらは製品カテゴリーを問わず共通して求められるため、輸出のたびに正確な情報で作成する体制を整えておく必要があります。
特に商業送り状は税関での価格確認にも使われるため、記載ミスがあると通関の遅延につながります。
通関・輸送でつまずきやすいポイント
初めて輸出する事業者がつまずきやすいのは、書類の不備よりも成分表示や規制対応に関する確認不足です。輸入時にFDAが安全性への懸念を指摘した場合、その場で輸入が差し止められることがあります。
事前に処方や表示内容を確認し、必要な登録が済んでいる状態で発送することが、通関をスムーズに進める前提条件になります。
小ロットからのスタートでも輸出は可能
かつては輸出というと大量ロットが前提というイメージがありましたが、現在は小口輸送を組み合わせるサービスや、越境ECプラットフォームの普及により、小ロットからの輸出も十分に現実的です。
まずは少量でアメリカ市場の反応を確認し、需要が見えてきた段階で生産体制を拡大するという進め方は、リスクを抑えながら海外展開を進める方法として有効です。
小ロットから自社ブランドの化粧品を立ち上げたい方は、
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こんな事業者は今すぐ検討する価値がある
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 小規模・少量生産でも海外需要がある商品を持つ事業者
- 国内販売が中心で輸出未経験の事業者
- 将来的に海外バイヤーとの取引を増やしたい事業者
ここまでの内容を踏まえ、実際にどのような事業者がアメリカ輸出を検討する価値があるのか整理します。
小規模・少量生産でも海外需要がある商品を持つ事業者
SNSや越境ECの口コミを通じて、すでに海外からの問い合わせを受けている事業者は、小規模事業者免除の対象になりやすく、輸出開始のハードルが比較的低いといえます。潜在的な海外需要がある製品を持ちながら国内販売に留まっている場合、まずは規制面のハードルの低さを把握することが第一歩になります。
国内販売が中心で輸出未経験の事業者
輸出未経験であることは、規制対応の複雑さを敬遠する理由になりがちです。しかし、売上規模が基準以下であれば施設登録や製品リストの義務が発生しないケースも多く、想定していたよりも対応負担が軽い場合があります。
まずは自社の売上実績と製品カテゴリーを照らし合わせ、免除対象かどうかを確認するところから始められます。
将来的に海外バイヤーとの取引を増やしたい事業者
海外バイヤーとの本格的な取引を見据える事業者にとっては、早い段階から規制対応の知識を蓄積しておくことが交渉力の強化にもつながります。バイヤー側から規制対応状況を問われた際に的確に説明できることは、信頼関係の構築において重要な要素です。
免除対象のうちから対応体制を整えておくことで、事業拡大のタイミングでもスムーズに移行できます。化粧品の輸出やOEM開発について、処方設計から輸出対応まで含めて相談したい場合は、専門パートナーへの早めの相談をおすすめします。
まとめ
化粧品のアメリカ輸出は、MoCRA施行により手続きの一部が変わったものの、年間売上高が一定基準以下の事業者には登録義務の免除措置が用意されています。免除対象であっても成分規制や記録保管の義務は継続するため、正確な理解のもとで準備を進めることが重要です。
小ロットからの輸出も現実的な選択肢となっている今、規制対応の全体像を把握したうえで、着実に海外展開のステップを踏んでいくことをおすすめします。
参考リンク
- 厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA):https://www.pmda.go.jp/
- U.S. Food and Drug Administration(FDA)Cosmetics:https://www.fda.gov/cosmetics
- 日本貿易振興機構(JETRO):https://www.jetro.go.jp/


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