化粧品OEMで新商品を企画する際、市場調査や処方設計から始めても納得感を得られないことがあります。そこで重要になるのが、使う側の感覚です。本記事では、実務の現場で活かせる発想転換のポイントを具体的に整理します。
化粧品OEMの新商品開発が「行き詰まる」理由
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
・市場調査を重ねても似た商品に収束してしまう理由
・成分や処方起点の企画が新しさを失いやすい構造
・「正解を外さない開発」が凡庸化を招く背景
まず、この章では、化粧品OEMにおける新商品開発がなぜ途中で行き詰まりやすいのかを整理します。多くの場合、失敗の原因は工程不足ではなく、最初の発想の置き所にあります。
特に、市場調査・成分設計・安全性といった“正しい判断”を積み重ねるほど、新商品らしさが薄れてしまう構造が存在します。以下では、その具体的な理由を3つの視点から解説します。
市場調査をしても、似た商品しか生まれない理由
まず、市場調査を重視しすぎると、新商品は既存商品の平均像に近づきます。なぜなら、トレンド分析や売上データは「多くの人に受け入れられた要素」を抽出する仕組みだからです。その結果、独自性よりも安心感が優先され、尖った発想は削ぎ落とされます。
一方で、市場調査は無意味ではありません。ただし、それは方向性を確認するための補助資料に過ぎず、企画の出発点に置くと発想の幅を狭めます。実務の現場では、調査結果を根拠にすると説明はしやすくなりますが、「なぜそれを作るのか」という芯は弱くなりがちです。
そのため、新商品開発では、市場調査を“答え探し”ではなく“前提条件の確認”として扱う姿勢が求められます。
成分や処方から考え始めると新しさが失われる構造
次に、成分や処方を起点に企画を組み立てる場合、新しさは生まれにくくなります。理由は明確で、開発初期から「配合できるか」「安定するか」「法規に適合するか」といった制約条件が優先されるためです。
その結果、企画段階で想定されるのは、すでに実績のある組み合わせや無難な処方設計になります。こうした判断は製品化の確実性を高めますが、同時に「使う瞬間」や「使い続けたときの感覚」が後回しになります。
実務的には正しい選択であっても、新商品としての体験価値は既存品と大きく変わらなくなります。
つまり、処方起点の企画は、完成度は高くても記憶に残りにくい製品を生みやすい構造を持っています。
「正解を外さない開発」が、結果的に凡庸になる理由
さらに、「失敗しないこと」を最優先にした開発判断は、新商品を既存市場の延長線上に固定します。実務では、前例のある設計や実績のある表現が選ばれやすく、結果として競合との差が見えにくくなります。
この状態では、新商品であっても「説明しなくても伝わる」構成になりやすく、消費者の記憶に残りません。説明が不要ということは、裏を返せば驚きや違和感がないという意味でもあります。
そのため、新商品開発では、正解を外さない設計と引き換えに何を失っているのかを自覚する必要があります。凡庸化の正体を理解することが、次の発想転換につながります。


今までにない化粧品は、どこから生まれてきたのか
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
・技術革新より先に起きている生活側の変化
・シートマスクに象徴される「使われ方」の転換
・化粧品の進化を生む「用途の再定義」という考え方
まず、この章では「今までにない化粧品」がどのような起点から生まれてきたのかを整理します。多くの場合、新規性は成分や製造技術の発明から生まれたように見えますが、実務の現場では必ずしもそうではありません。
むしろ先に変わっているのは生活環境や使われ方であり、技術はそれに対応する形で選ばれています。以下では、その構造を具体的に確認します。
技術革新より先に、生活の変化が起きている
まず、化粧品分野では技術が市場を引っ張っているように見えがちですが、実際には生活側の変化が先行しています。忙しさの増加、使用場所の多様化、ケアにかけられる時間の短縮など、日常環境は大きく変化しています。
その結果、「高機能であること」よりも「無理なく使えること」が優先される場面が増えました。この変化に対応するため、既存技術が別の形で使われるようになったのが実情です。
つまり、新商品は新技術の登場によって生まれるのではなく、生活の変化に適応するための再設計として生まれています。
シートマスクは形状の進化ではなく、使われ方の進化だった
次に、シートマスクの普及は分かりやすい事例です。表面的には形状の変化に見えますが、本質は使われ方の転換にあります。もともとパックは、時間と場所を確保して行う特別なケアでした。
一方で、シートマスクは姿勢や時間を限定せず、日常動作の中に組み込める設計です。この「時間」と「姿勢」の制約を外した点が、市場拡大の要因になりました。
重要なのは、ここで新しい成分が必須だったわけではない点です。既存の技術を、生活導線に合わせて再配置した結果として定着しました。
化粧品の進化は、いつも「用途の再定義」から始まる
さらに、化粧品の進化を振り返ると、共通して見られるのが用途の再定義です。美容のために使うものから、不快感を減らすための道具へと役割が変わることで、新しい価値が生まれます。
この変化が起きると、評価軸も変わります。効果の強さよりも、使い続けやすさや生活へのなじみやすさが重視されるようになります。
そのため、新商品開発では「何のために使うのか」を再定義することが、最も現実的な新規性の源泉になります。


新商品コンセプトは「使い続けたいか?」から設計する
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
・売りたい商品と、使い続けたい商品の設計思想の違い
・使用頻度・使用シーンを起点にした要素整理の方法
・毎日使う前提で考えたときに残る本質的な価値
まず、この章では新商品コンセプトの起点を「売れるか」ではなく「使い続けたいか」に置き直します。実務の現場では、機能や訴求を積み上げるほど商品は複雑になりがちです。
しかし、長く選ばれる商品は例外なく、使う側の負担が最小限に抑えられています。以下では、その違いを具体的に整理します。
売りたい商品と、使い続けたい商品の決定的な違い
まず、売りたい商品は企画側の意図が前面に出やすく、特徴や強みが明確に整理されています。一方で、使い続けたい商品は、使う側の生活に自然に溶け込み、存在を強く意識させません。
この差は設計思想の違いから生まれます。前者は「一度使ってもらう」ことを重視し、後者は「使い続けても負担にならない」ことを重視します。その結果、使い続けたい商品ほど説明が少なく、操作や手順も簡略化されています。
新商品開発では、この違いを理解したうえで、どちらを目指すのかを最初に明確にする必要があります。
使用頻度・使用シーンを書き出すと、不要な要素が見えてくる
次に、使用頻度や使用シーンを具体的に書き出すことで、設計上の優先順位が整理されます。毎日使うのか、週に数回なのか、あるいは特定の時間帯だけなのかによって、許容される手間や重さは大きく異なります。
この作業を行うと、「なくても困らない要素」が自然と浮かび上がります。たとえば、毎日使う前提であれば、高機能よりも操作性や感触の一貫性が重要になります。
結果として、成分構成や形状も自動的に絞り込まれ、商品全体がシンプルな方向へ収束します。
「毎日使う前提」で考えると、新商品は必ずシンプルになる
さらに、毎日使う前提で新商品を設計すると、複雑な仕様は継続の妨げになります。高機能であるほど、使用時の負担や迷いが増え、結果的に使用頻度は下がります。
実務上、継続使用される商品ほど、機能数は抑えられ、使い方も直感的です。これは性能を削っているのではなく、価値を一点に集中させている状態です。
そのため、新商品開発では「何を足すか」よりも「何を残すか」を判断する視点が不可欠になります。継続性こそが、長期的な価値を生む最大の要因です。


開発者より、使う側のほうが自由な発想を持っている
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
・開発者と消費者で異なる思考の出発点
・OEMを依頼する企業・サロンが持つ自由度
・現場の違和感が商品アイデアに変わる仕組み
まず、この章では「誰が一番自由な発想を持っているのか」を整理します。新商品開発では、専門知識を持つ開発者が主導する印象がありますが、実務の現場では、使う側の感覚が起点になるケースほど独自性が生まれやすい傾向があります。その理由を、役割と視点の違いから解説します。
開発者は「できるか」を考え、消費者は「困っている」を感じている
まず、開発者は常に「実現可能性」を軸に判断します。処方の安定性、法規制、製造条件などを考慮するため、発想はどうしても制約の内側に収まります。
一方で、消費者は「今、何が不便か」「どこが使いにくいか」という体験ベースで物事を捉えます。この視点には技術的な前提がないため、違和感はより直接的です。
その結果、消費者の違和感は、開発者が見落としがちな改善点を明確に示します。この差が、新商品アイデアの質に大きく影響します。
OEMを依頼する企業・サロンのほうが発想が自由な理由
次に、OEMを依頼する側である企業やサロンは、開発工程の制約から一定の距離を保っています。そのため、「こうでなければならない」という前提に縛られにくい立場です。
実務では、既存商品の成功体験があるほど、発想は固定化されやすくなります。一方で、OEMを活用する側は「これ、少し変ではないか」と率直に疑問を投げかけることができます。
この自由度が、新商品コンセプトの出発点として大きな強みになります。
現場の違和感は、そのまま商品アイデアになる
さらに、現場で感じる小さな違和感は、そのまま商品アイデアの核になります。使いにくい、面倒に感じる、特定の部分だけ気になるといった感覚は、具体的な改善対象を示しています。
これらは抽象的な要望ではなく、使用シーンに紐づいた明確な課題です。そのため、企画に落とし込みやすく、開発側とも共有しやすい特徴があります。
新商品開発では、この違和感を軽視せず、仕様に翻訳することで、他にはない価値を持つ商品が生まれます。


開発側とOEM依頼側、役割を混ぜない方が新商品は生まれる
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
・意見を足し算したときに起きやすい企画の崩れ
・役割分担を明確にした場合の企画精度の違い
・共同開発における「翻訳」という考え方
まず、この章では開発側とOEM依頼側の関係性に焦点を当てます。新商品開発では、双方が積極的に意見を出し合うことが理想とされがちです。
しかし、実務の現場では、役割を混同すると企画の軸が曖昧になりやすいという課題があります。以下では、その理由と整理の仕方を解説します。
意見を足し算すると、どこにでもある商品になる
まず、開発側と依頼側の意見をすべて取り入れると、企画は平均化します。双方の要望を満たそうとする過程で、主語が曖昧になり、「誰のための商品か」が見えにくくなるためです。
実務では、機能追加や仕様調整を重ねるほど、商品は無難な方向に収束します。その結果、完成度は高いものの、既存商品との差が感じられなくなります。
そのため、新商品開発では、意見を集めること自体が目的にならないよう注意が必要です。足し算の思考は、独自性を削ぐ要因になります。
「役割分担」が明確なほうが、企画は尖る
次に、役割分担を明確にすると、企画の軸は一気に明確になります。OEM依頼側は、使う瞬間の感覚や違和感、現場での体験を提示します。一方で、開発側は、それを実現可能な仕様や処方、法規対応に落とし込みます。
この分担が整理されている場合、企画はブレにくくなります。感覚と技術がそれぞれの役割を果たすことで、判断基準が明確になるためです。
結果として、商品は尖りながらも実務的に成立する形に整います。
共同開発とは、意見を混ぜることではなく翻訳すること
さらに、共同開発の本質は意見を混ぜることではありません。重要なのは、依頼側の感覚を開発側が理解できる言葉に翻訳することです。
たとえば、「使いにくい」「重たい」といった感覚は、そのままでは仕様に落とせません。しかし、使用シーンや頻度、困っている状況を具体化することで、処方や形状に変換できます。
この翻訳作業こそがOEMの価値であり、新商品開発を成立させる要です。


新商品開発とは、「今ある技術の別の使い道」を見つけること
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
・新技術がなくても新商品は成立する理由
・「使う瞬間に完成する」という設計発想
・完成品を売らないという新しい商品設計の考え方
まず、この章では「新しい技術がなければ新商品は作れない」という思い込みを整理します。実務の現場では、まったく新しい技術よりも、既存技術の使い方を変えることで差別化が生まれるケースが多く見られます。以下では、その具体的な考え方を段階的に解説します。
新技術がなくても、新商品は作れる
まず、新商品開発において必ずしも新技術は必要ありません。ゲル化、微粒子化、固形化といった技術はすでに確立されており、製造面でも実績があります。
重要なのは、それらを「何のために使うか」です。同じ技術でも、用途や使用シーンを変えることで、まったく異なる価値を持つ商品になります。
実務では、新技術の導入はコストやリスクを伴いますが、既存技術の組み替えであれば、安定性を保ちながら新規性を出すことが可能です。
「使う瞬間に完成する化粧品」という考え方
次に、「工場で完成した状態」を前提にしない設計があります。使う瞬間に状態が変わり、そこで初めて完成する化粧品は、体験そのものが価値になります。
たとえば、手の中で形状が変わる、肌に触れたときに感触が変化するといった設計は、使用者に明確な印象を残します。この変化は、機能説明よりも直感的に理解されます。
そのため、使う瞬間を起点に設計することで、説明に頼らない新商品が成立します。
完成品を売らないという、新しい化粧品設計
さらに、完成品を売らないという発想は、従来の化粧品設計とは異なる価値軸を生みます。状態変化や感触の変化は、使用者にとって体験として記憶されやすい要素です。
この場合、重要なのは変化そのものではなく、「なぜその変化が必要か」という理由です。使いやすさや不快感の軽減と結びついて初めて、価値として成立します。
結果として、変わる感触や消える存在感は、「今までにない」と感じられる要因になります。


化粧品OEMの新商品開発は、もっと感覚的でいい
この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
・正解探しに偏った開発思考の限界
・トレンドではなく「使う瞬間」を起点にする重要性
・自分自身の使用感覚を判断軸に据える意味
まず、本記事全体を通してお伝えしてきたのは、新商品開発において最も重要なのは工程や理論ではなく、発想の起点であるという点です。市場調査や技術検討は必要ですが、それらは判断を補強する材料であって、出発点ではありません。以下では、これまでの内容を三つの視点で整理します。
正解を探すより、違和感を信じる
まず、新商品開発で正解を探そうとすると、どうしても既存市場の延長線に収束します。理由は、正解とされる要素が過去の成功事例から抽出されているためです。
一方で、違和感はまだ言語化されていない課題を含んでいます。そのため、数値や前例では裏付けにくいものの、新商品としての芽を多く含みます。
実務の現場では、この違和感を軽視せず、なぜそう感じるのかを整理することが、独自性のある企画につながります。
トレンドより、使う瞬間を想像する
次に、トレンドを追うだけでは、商品は似通っていきます。成分や処方の流行は一定期間で入れ替わりますが、使う瞬間の不便さや快適さは大きく変わりません。
そのため、新商品開発では「どこで」「どのように」「どの頻度で」使われるのかを具体的に想像する必要があります。この視点を持つことで、機能の取捨選択が明確になります。
結果として、トレンドに左右されにくい、継続性のある商品設計が可能になります。
「自分が使い続けたいか」は、最強の判断軸
最後に、自分自身が使い続けたいかどうかは、新商品開発において非常に強い判断軸になります。これは主観的な感覚に見えますが、実務では一貫性のある基準として機能します。
なぜなら、使い続けたいと感じる商品には、手間の少なさ、負担のなさ、生活へのなじみやすさといった共通点があるからです。
その感覚を起点に、開発側と翻訳作業を行うことで、無理のないオリジナル商品が成立します。


まとめ
まず、本記事で整理してきた内容を、要点としてまとめます。
・化粧品OEMの新商品開発が行き詰まる原因は、工程ではなく発想の起点にあります
・市場調査や成分設計を出発点にすると、新しさは平均化されやすくなります
・・今までにない化粧品は、技術革新よりも「使われ方」や「用途の再定義」から生まれます
・開発者よりも、使う側やOEMを依頼する側の違和感のほうが、企画の種になりやすいです
・「自分が使い続けたいか」という感覚は、新商品開発における有効な判断軸になります
次に、これらを踏まえると、化粧品OEMで新商品を検討する際に整えるべきポイントが明確になります。
正解を探すのではなく、現場や日常の中で感じている違和感を言語化し、それを開発側と翻訳し合うことが重要です。
その積み重ねが、無理のないオリジナル商品につながります。
小ロットから自社ブランドの化粧品を立ち上げたい方は、
👉「化粧品OEM 小ロット100個対応」
https://ai-cosmetic.co.jp/cosmetics-oem-small-lot/
をご覧ください。
① 経済産業省|化粧品産業に関する統計・産業動向
化粧品市場規模、産業構造、今後の課題を把握するための公式資料です。
記事中の「業界全体が成熟し、差別化が難しくなっている背景」の裏付けとして有効です。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/healthcare/cosmetics.html
② 日本化粧品工業連合会(JCIA)|化粧品の定義・業界情報
化粧品の位置づけ、業界の考え方、基本的な枠組みを確認できる業界団体の公式情報です。
「化粧品は技術だけでなく使われ方で評価される」という文脈補足に適しています。
③ 日本貿易振興機構(JETRO)|世界の化粧品市場動向
世界市場の成長、国別傾向、用途・消費行動の変化を確認できます。
「用途の再定義」「使われ方の変化」が日本だけの話ではないことを示す資料です。
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/industry/cosmetics.html
④ 国立医薬品食品衛生研究所|化粧品に関する安全性・制度情報
化粧品開発が「自由でありながら、制度の中で設計されている」ことを示す公的情報です。
開発者視点・審査側視点の背景理解に使えます。

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