化粧品OEMを始めるとき、多くの人が失敗する原因は「正しい利益率の理解」がないことです。この記事では、原価率の仕組みやOEMごとの特徴を整理し、利益を残すための判断軸を分かりやすくまとめます。
H2:化粧品OEMの利益率の相場とは
まず、この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 一般的な化粧品OEMの利益率範囲(20〜40%が目安)
- 原価率10〜20%が多いと言われる理由と内訳イメージ
- ロット規模・販売チャネル別に変動する利益率
次に、この章では化粧品OEMの利益率を判断するための基礎となる「数値の相場」を整理します。利益率はブランド設計やロット規模によって大きく変動するため、正しい前提を知らずに価格設定を行うと失敗しやすくなります。つまり、ここで利益率と原価率の目安を理解しておくことで、後の見積もり比較や利益設計が格段にやりやすくなります。

化粧品OEMの流れを知りたい方はこちら
https://ai-cosmetic.co.jp/oem-flow/
H3:一般的な化粧品OEMの利益率範囲(20〜40%が目安)
まず、化粧品OEMの利益率が20〜40%と言われるのは、原価率が比較的低く設定できるビジネス構造に理由があります。次に、中身の原料コストや容器単価はロット数が増えるほど下がりやすく、原価を10〜20%程度に収められれば、販売価格との差がそのまま粗利益へと反映されます。さらに、スキンケアは単価を上げやすいため、粗利額を確保しやすい点も特徴です。また、ブランド側がEC販売や店販ルートを活用することで、利幅を大きく維持できるケースも少なくありません。最終的にはロット・販路・単価戦略のかけ合わせで利益率は変動しますが、20〜40%は初心者でも意識しやすい現実的な基準です。
H3:原価率10〜20%が多いと言われる理由と内訳イメージ
まず、化粧品の原価率が10〜20%に収まる背景には、原料と容器の調達構造があります。次に、スキンケアの中身は大手原料メーカーの量産体制によってコストが安定し、機能性成分を適切に組み合わせても1本あたり数百円程度に抑えられる場合が多いです。また、容器は既製ボトルを採用すると単価が下がり、ロットが増えるほど割安になります。この結果として、「中身+容器」で原価の大部分を占めながらも、合計で販売価格の2割前後に収まるケースが一般的です。さらに、OEMの既存処方や汎用容器を活用すると初期費用も下げやすく、原価率を適正な範囲で維持できます。
H3:ロット規模・販売チャネル別に変動する利益率
まず、利益率が大きく変動する理由は「ロット数と販売経路」が直接コスト構造に影響するためです。次に、生産ロットが小さいほど固定費が1本あたりの単価に重くのしかかり、原価率は高くなりやすくなります。たとえば100本ロットでは原価率が30%を超えるケースも珍しくありませんが、1,000本以上になると原料・容器・充填費が下がり、原価率は20%前後に安定しやすいです。また、販売チャネルによる利益率の差も大きく、自社ECやサロン販売は中間コストがないため利幅を確保しやすく、卸売や量販店向けは売価が低くなり利益率が縮小します。したがって、利益設計には「ロット×販路」の組み合わせを前提に考えることが欠かせません。
H2:利益を出しやすいOEMビジネスモデルの特徴
まず、この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 仕入れ販売よりもOEMが高利益率になりやすい構造
- 独自販路(自社EC・直営店)を持つブランドの強み
- ニッチコンセプトと高付加価値処方による上限アップ
次に、この章では「なぜOEMは利益を出しやすいと言われるのか」という根本構造を整理します。利益率は中身の原価だけで決まるのではなく、販売方法やブランド設計により大きく変動します。つまり、OEMの本質は“モノづくり”ではなく、“利益率を設計しやすい仕組みづくり”にあります。この視点を持つことで、個人ブランドでも大手と同じように利益を伸ばせる余地が見えるようになります。

小ロットOEMの注意点を詳しく解説した記事はこちら
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H3:仕入れ販売よりもOEMが高利益率になりやすい構造
まず、仕入れ販売では上代と仕入れ値の差がそのまま限界となり、粗利率は30〜40%に留まりやすい構造があります。次に、OEMで自社ブランドを持つ場合は、原価率を20%前後に設定できれば、残りの80%の中で利益設計ができるため、利益率を大幅に高める余地が生まれます。また、販売価格を自ら設定できる点も強みで、ブランド価値や付加価値を乗せることで粗利額がさらに増加します。さらに、ECやサロン販売のように中間マージンが少ないチャネルと組み合わせれば、単品利益は一段と高まり、利益率を主体的にコントロールできます。したがって、OEMは「利益構造を自分で作れる」点が最大の魅力です。
H3:独自販路(自社EC・直営店)を持つブランドの強み
まず、自社ECや直営サロンを持つブランドは、中間マージンを削減できるため、利益率が高まりやすい特徴があります。次に、卸売を前提とする場合は販売価格が制限され、粗利が圧縮されやすくなりますが、独自販路では上代を自由に設定できることで利益額を調整しやすくなります。また、顧客データを自社で管理できる点も大きな強みで、リピート施策やセット販売を設計しやすく、長期的な収益を積み上げる基盤を作れます。さらに、ブランド世界観や価値を直接伝えられるため、価格競争に巻き込まれにくく、高付加価値戦略を実現しやすくなります。このように、独自販路は「利益率を維持しながらブランドを育てられる」重要な要素です。
H3:ニッチコンセプトと高付加価値処方による上限アップ
まず、化粧品OEMで利益率を引き上げたい場合、ニッチなターゲットを設定することが極めて効果的です。次に、「誰でも使える化粧品」よりも、「インナードライ向け」「エイジング層特化」「敏感肌×美白」など、悩みを具体化した商品ほど価値を理解されやすく、価格設定の自由度が高まります。さらに、ナイアシンアミド・ビタミンC誘導体・ペプチドといった機能性成分を適正濃度で組み合わせることで、商品そのものの“説得力”が上がり、単価を押し上げやすくなります。また、単価が高いほど粗利額が増えるため、売上規模の小さい個人ブランドでも利益率が安定しやすい点は大きなメリットです。したがって、「狭く深く刺さるコンセプト」と「高付加価値処方」の掛け合わせは、高利益率ブランドを育てる重要な基盤となります。
H2:売上規模の異なるOEMが採用するポジションと収益戦略
まず、この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 技術開発力を武器にするOEMの収益モデル
- 量産特化型OEMが行うコスト最適化戦略
- メイクアップ専門OEMの高収益モデル
- D2C向け処方と販促支援を併用するOEMの特徴
- 企画・コンサル型OEMが利益を確保する仕組み
次に、この章では企業名を一切使用せず、OEMメーカーが業界内でどのような“立ち位置”や“収益戦略”を採用しているのかを体系化して整理します。OEMのタイプによって強みや利益構造は大きく異なるため、ブランド側が「どのタイプと組むべきか」を判断する材料にもなります。つまり、ポジションごとの特徴を理解することで、自社ブランドの利益率がどこまで伸ばせるのかが見えてきます。

日本製コスメが世界で選ばれる理由をまとめた記事はこちら
https://ai-cosmetic.co.jp/why-japanese-cosmetics/
H3:技術開発力を武器にするOEMの収益モデル
まず、技術開発力を強みに持つOEMは、高機能処方や難易度の高い案件を扱えるため、安定した利益構造を築きやすい特徴があります。次に、研究設備や検証データを自前で蓄積しているため、処方開発から量産まで一貫して対応でき、試作や改良にかかるコストを平準化しやすくなります。また、成分の組み合わせ提案や機能性の評価データを提供できるため、ブランド側は付加価値の高い商品を作りやすくなり、結果として販売価格を上げやすい点も収益性の向上につながります。さらに、長期的な案件を複数抱えるOEMほどライン稼働率が安定し、1本あたりの製造コストを下げられるため、OEM側だけでなくブランド側にとっても利益率を維持しやすいメリットがあります。
H3:量産特化型OEMが行うコスト最適化戦略
まず、量産特化型のOEMは大量製造を前提としたライン構成を持ち、1本あたりの固定費を大幅に下げられる点が収益性の中心になります。また、原料や容器を大量ロットで仕入れることで単価を引き下げ、原価率を安定させる仕組みが整っています。次に、このモデルでは生産計画の効率化が重要で、連続充填や同系統処方のバッチ対応により作業ロスを最小化し、結果としてブランド側の見積もりも抑えやすくなります。さらに、量産体制に強いOEMほど品質管理システムが標準化されており、同一ロット内のブレを減らせるため、大規模ブランドでも採用されやすい傾向があります。このように、量産型OEMは「規模の経済」を活かすことで、利益率と原価率の双方を最適化する戦略を取っています。
H3:メイクアップ専門OEMの高収益モデル
まず、メイクアップ専門のOEMは「色づくり」「質感設計」「粉体技術」など、高度な専門スキルが必要な分野を扱うため、技術料を適正に確保しやすい特徴があります。また、仕上がりの再現性や使用感の微調整が難しい領域であるため、他社が簡単に代替できず、専門性そのものが収益源として機能します。次に、メイク製品はスキンケアと比較して単価差が大きく、仕様によって利益幅を調整しやすい点も高収益につながります。さらに、シーズンごとの新色や限定品の需要が高いため、ブランド側の新規案件が途切れにくく、OEM側の稼働率が安定しやすくなる傾向があります。結果として、専門性を持つOEMは「技術力×継続案件」の組み合わせにより、利益率を維持しやすいモデルを形成しています。
H3:D2C向け処方と販促支援を併用するOEMの特徴
まず、D2C向けのOEMは“商品開発だけではなく売る仕組みまで支援する”点が大きな特徴です。その理由として、オンライン販売では顧客の悩みや検索ワードに合わせた処方設計が求められるため、OEM側が企画段階から関わることでブランドの方向性を作りやすくなります。また、評価データや訴求ポイントの設計をサポートするOEMも増えており、広告運用やLP制作に必要な根拠が揃うことでブランド側の販売効率が高まりやすくなります。さらに、D2Cでは定期販売やセット提案がしやすいため、単品売りよりもLTVが伸び、結果としてOEM側も継続案件を受けやすくなる構造があります。このように、D2C支援型OEMは“処方+販促”の掛け合わせで利益を生みやすい特徴を持っています。
H3:企画・コンサル型OEMが利益を確保する仕組み
まず、企画・コンサル型OEMは“商品を作るだけ”ではなく、ブランドの方向性やコンセプト設計から深く関わることで利益を確保するモデルを取ります。次に、このタイプは処方開発に加えてターゲット設定・価格設計・販売動線など、商品戦略の基盤を構築するため、ブランド側は失敗リスクを抑えやすくなり、OEM側も継続案件につながりやすい点が収益面の安定につながります。また、顧客ごとにカスタマイズされた企画書や市況分析を提供できるため、単なる製造受託に比べて価値提供の幅が広がり、結果として適正な利益率を維持できます。さらに、ブランド成長に合わせて改良品や新シリーズの開発が発生しやすく、長期契約や複数SKU展開が続くことでOEM側の収益が安定しやすい構造になります。
H2:高い利益率を狙うためのOEMメーカー注目ポイント
まず、この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- 目標原価率と利益希望率から逆算した見積もり比較
- 小ロット対応と利益率バランスの考え方
- 販促支援・処方ライブラリ・薬事サポートの重要性
次に、この章では「OEMを選ぶ際にどこを見るべきか」を利益率の観点から整理します。利益率は原料や容器のコストだけでは決まらず、見積もりの構造やOEMが持つ支援体制によって大きく上下します。つまり、価格だけを比較して選ぶと後で利益が残らなくなることが多いため、ブランド側が“どのポイントを見れば損しないか”を事前に理解しておくことが重要です。この視点を押さえることで、適正な原価率と利益率のバランスが判断しやすくなります。

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H3:目標原価率と利益希望率から逆算した見積もり比較
まず、見積もりの適正さを判断するためには「目標原価率」と「利益希望率」から逆算する方法が欠かせません。原価率を10〜20%に設定したい場合、販売価格から逆算して許容できる製造コストを明確にすることで、見積もりの妥当性を冷静に比較できます。また、OEMによって見積もり項目の構成が異なり、処方費・試作費・充填費・容器代のどこにコストが乗っているのかを把握しないと、総額だけで判断して失敗しやすくなります。さらに、安すぎる見積もりは原料や仕様が簡素化されている可能性があるため、原価率の裏にある“理由”を見ることが大切です。結果として、逆算思考で見積もりを見ると、利益を残すための適正ラインが明確になります。
H3:小ロット対応と利益率バランスの考え方
はじめに、小ロット生産は在庫リスクを抑えられる一方で、1本あたりの製造コストが高くなる傾向があります。特に100~300本規模では、充填費や容器単価が割高になりやすく、原価率が上昇するため、利益率の確保が難しくなるケースもあります。また、小ロットは検証フェーズとして有効であり、初期段階で“売れるかどうか”を判断するには非常に相性が良い手法です。続いて、利益率を維持したい場合は、SKUを絞り込んだうえで販売価格の設定を慎重に行い、原価率をどこまで許容できるかを明確にすることが重要です。さらに、商品が軌道に乗った段階でロットを増やせば、原価が下がり利益率は改善します。したがって、小ロットはブランド成長の入口として活用し、段階的に利益構造を整えることが効果的です。
H3:販促支援・処方ライブラリ・薬事サポートの重要性
まず、OEMを選ぶ際は製造価格だけで判断せず、販促支援や薬事サポートの有無を確認することが利益率向上に直結します。なぜなら、商品の品質が高くても、販売導線が整っていないと売上が伸びず、在庫負担によって利益率が下がってしまうためです。また、処方ライブラリを持つOEMは、既存の処方をベースに改良できるため、開発費を抑えつつ機能性の高い商品を構築できます。さらに、薬事サポートが整っているOEMであれば、成分表記や広告表現のチェックがスムーズになり、販売開始までの時間を短縮できる点も大きなメリットです。最終的には、「作る力」だけでなく「売るための基盤」をどこまで支援してくれるかが、利益率の差につながります。
H2:OEM化粧品で利益を最大化する実務的な工夫
まず、この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。
- SKUを絞って在庫リスクと値下げを軽減
- 処方ライブラリ・汎用容器で初期コストを抑える
- 定期販売・セット販売・クロスセルのLTV戦略
次に、この章では利益率を数字として高めるだけでなく、「実務レベルでブランドが利益を残すために必要な具体策」を整理します。実際のOEM取引では、商品の作り方よりもSKU管理や在庫調整、価格設計のほうが利益に強く影響します。さらに、初期フェーズと成長フェーズで優先するべき判断が異なるため、状況に応じた工夫が求められます。つまり、ここで紹介する実務的なポイントを押さえることで、少ないロットからでも安定して利益を積み上げられる仕組みがつくれます。

化粧品OEMのよくある失敗例と回避ポイントはこちら
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H3:SKUを絞って在庫リスクと値下げを軽減
まず、利益を最大化するためにはSKUを増やしすぎないことが重要です。SKUが多いほど在庫が分散し、売れ残りや値下げ処分によって利益率が低下しやすくなります。また、販売データを蓄積しにくくなるため、どの商品の投入が正解だったのか判断しづらくなる点もリスクです。次に、SKUを絞ることで製造ロットを確保しやすくなり、1本あたりの原価が下がるため、利益率は自然と改善します。さらに、ブランドの世界観が明確になり、広告運用やECの導線設計もシンプルになって、結果的に販売効率も高まりやすくなります。したがって、立ち上げ期は特に“少数精鋭”で構成し、確実に売れる商品だけに集中することが利益確保の近道です。
H3:処方ライブラリ・汎用容器で初期コストを抑える
まず、OEMで初期コストを抑える最も効果的な方法は「処方ライブラリ」と「汎用容器」を活用することです。処方ライブラリを使う場合、すでに評価済みの処方をベースに微調整するだけで商品を組み立てられるため、開発費や試作回数が減り、立ち上げコストを大幅に下げられます。また、汎用容器を選択すれば金型代が不要になり、単価も安定しやすく、特に小ロット生産では費用対効果が非常に高くなります。さらに、容器の納期が短縮できるため、販売開始までのスケジュール管理が容易になり、資金繰りにも余裕が生まれます。このように、初期費用を抑えながら高品質な商品を実現するためには、既存資源を賢く組み合わせて活用することが欠かせません。
H3:定期販売・セット販売・クロスセルのLTV戦略
まず、化粧品ブランドが安定して利益を伸ばすためには、単品販売だけでなくLTV(顧客生涯価値)を高める仕組みを導入することが重要です。定期販売を取り入れると毎月の売上予測が立てやすくなり、在庫管理や仕入れ計画も安定して利益率が向上します。また、セット販売は客単価を自然に引き上げられるため、広告費を抑えながら売上を最大化できる点が大きな魅力です。さらに、購入者に関連アイテムを提案するクロスセルは、顧客の悩みに合わせた最適な商品を提供でき、ブランドへの信頼度も高まりやすくなります。結果的に、これらの仕組みを組み合わせることで継続購入が増え、安定した利益基盤を構築できます。
【付録①】化粧品OEMの利益率が変動しやすい本当の理由(深掘り解説)
まず、化粧品の利益率は「原価率」だけで語られがちですが、実際にはそれ以上に“見えないコスト”が利益に直結します。たとえば、EC運営では広告費・配送費・決済手数料・返品対応などが積み重なり、利益率が想定より下がることが多くあります。また、商品1SKUを維持するだけでも、LPや商品ページの更新、レビュー管理、システム維持費などの運用コストがかかるため、単品の粗利が高くても手元に残らないケースが生まれます。
さらに、OEM側は製造ロットを安定させたいという事情があり、ロットを増やすほど価格が下がるため、ブランド側が利益を最大化したい場合は「ロット最適化」が極めて重要になります。次に、容器や化粧箱の発注ロットも利益率に大きな影響を与えます。特に化粧箱は1000枚単位になることが多く、小ロット製造の足を引っ張る要素になりがちです。このような背景を理解しないままブランド運営を始めると、予期しないコストで利益率が大きく削られてしまいます。
加えて、商品単価の設定が適切でないケースも珍しくありません。市場価格に合わせて価格を低くしすぎると、広告費や物流費を差し引いた後にほとんど利益が残りません。一方で、過度に高単価にすると購入率が落ち、在庫リスクが増えるという別の問題も発生します。そのため、OEM化粧品の価格設定は「原価の◯倍」という単純計算では成り立たず、“ブランド戦略 × 販売チャネル × 広告設計”の三つが揃って初めて最適解が見えてきます。

【付録②】原価率を10〜20%以内に収めるための実践テクニック
まず、原価率を適正値に保つには「中身」「容器」「付帯作業」の三つを分けて考えることが必須です。中身は処方ライブラリを使えば価格を抑えられますが、悩み特化型にすると機能性成分のコストが上がるため、感触・使用量・売価の三つのバランスが重要になります。また、容器はデザイン性を優先しすぎると単価が急上昇しますが、既製容器でも上質なものが増えているため、コストと世界観を両立しやすくなっています。
次に、化粧箱やラベルなどの梱包資材は「見積もり落とし穴」になりやすい部分です。特に化粧箱は小ロットだと1枚あたり100円を超えることもあり、販売価格に対して負担が大きくなります。ラベルはロール仕上げにするかバラ納品にするかで貼り工賃も変わり、これらの細かい費用が積み重なることで原価率が変動します。さらに、充填作業も容量・粘度・形状によって単価が変わるため、ボトルと中身の相性を理解しないと予期せぬ費用が加算されます。
最後に、原価率は単に“低ければ良い”わけではありません。ブランドイメージやターゲット価格との整合性が最も重要で、安い商品を作っても利益が伸びるとは限りません。むしろ、適正な原価をかけて高付加価値に設計し、LTVを高めるほうが利益率は安定します。結果として、ブランド戦略に基づいた“意図ある原価率”を設計することが、長期運営では最も重要なポイントになります。

【付録③】利益率を押し上げる「ブランド設計」の重要性
まず、化粧品の利益率は商品単体ではなく“ブランドとしてどう見られるか”で大きく変わります。市場には似たような成分の化粧品が多く、差別化できなければ単価を上げることはできません。一方で、世界観・ストーリー・デザインが統一されたブランドは、同じ処方でも価格を上げやすく、これが利益率向上に直結します。
さらに、ブランドの世界観を固めると広告効果が上がり、CPA(獲得単価)が下がりやすくなります。見た目・訴求・メッセージが統一されることで顧客の記憶に残り、ファン化が進むためリピート率も高まります。これらはすべて利益率を押し上げる要因になるため、“商品を作る前にブランド設計を作る”という順番が非常に重要です。
また、ブランドの世界観が確立すると、OEMメーカーとのやり取りもスムーズになり、提案内容がクリアになります。コンセプトが明確なブランドほど、OEM側も適切な処方や容器を提案しやすくなるため、結果として無駄な試作や仕様変更が減り、コストが最適化されます。ブランド設計は単なるデザインではなく、“利益率を高めるための戦略”そのものです。

【付録④】OEM利益率を安定させる“隠れコスト管理”の重要性
まず、OEM化粧品の利益率を安定させるためには、表面上の原価だけでなく「隠れコスト」を把握することが欠かせません。隠れコストとは、商品単体の原価表には載らないものの、運営に大きく影響する費用のことです。たとえば、ECで販売する場合は決済手数料・返品送料・冷静な顧客対応にかかるスタッフ工数などがあり、これらは商品1本あたりの利益をじわじわ削っていきます。また、広告運用を行う場合は、クリック単価の変動や季節要因でCPAが跳ね上がることがあるため、利益率を計算する際は“平均CPA”ではなく、“最も高騰した時のCPA”を基準に利益計算するほうが安全です。
次に、物流費も無視できない要素です。特に美容液やクリームは重量があるため送料が高くなりがちで、1本の利益を削る要因になります。さらに、倉庫保管費やピッキング費用もブランド規模によって変わるため、利益率シミュレーションでは「販売本数に連動しない固定費」をしっかり含めて計算する必要があります。この視点が不足すると、売上が伸びても利益率が下がる“成長赤字”の状態になりやすくなります。
続いて、在庫回転率も利益を大きく左右します。売れ行きが遅いSKUは保管期間が長くなるため、倉庫費用が積み重なり、利益を圧迫します。そのため、SKUごとの回転速度は常にチェックし、動きの遅いSKUは生産数を調整したり、リニューアルを検討することが効果的です。さらに、賞味期限(使用期限)管理も重要で、特に美容液・クリーム・日焼け止めなどデリケートな商品の場合、期限切れによる廃棄ロスが利益率に直結します。OEMは通常、1年〜3年の使用期限を設定しますが、在庫管理が追いつかないと突然の大量廃棄が起こりうる点は必ず押さえておくべきです。
また、カスタマーサポートにかかるコストも利益率を左右します。問い合わせが多い商品はその分手間がかかり、スタッフの対応時間が増えます。これは見えない運用コストとして積み上がりやすく、利益率を確実に押し下げます。したがって、使用方法が複雑になりすぎない処方構成や、明確でわかりやすい商品説明を用意することは、結果的に利益率改善にもつながります。
最後に、ブランド全体の利益率を守るためには、定期的な原価の見直しが不可欠です。原料価格は市場状況や世界情勢で変動するため、特に輸入成分が多い処方の場合はコスト見直しが重要になります。さらに、容器メーカーもロットや材料事情で価格が変わることがあるため、継続生産している商品でも年1回は見積もりを取り直すことが望ましいです。このように、利益率は単に“安く作るか”ではなく、“運営全体をどれだけ最適化できるか”で決まる指標です。ブランド運営の段階ごとに必要な管理ポイントが変わるため、利益率は常に動く数字として捉えることが重要です。

まとめ:化粧品OEMで利益を残すための5つの重要ポイント
- OEM化粧品の利益率は、原価率・ロット・販売チャネルの組み合わせで大きく変動する
- ビジネスモデルの違いによってOEM側の収益構造が変わり、ブランドの利益にも影響する
- 見積もり比較は“逆算思考”で行い、原価率の裏側にある理由まで確認することが重要
- 小ロットは在庫リスクを抑えられる一方で、利益率が下がりやすいので段階的な拡大が効果的
- LTV向上の仕組み(定期・セット・クロスセル)を取り入れることで、利益基盤が安定する
総括
化粧品OEMで安定した利益を残すためには、商品の作り方だけでなく、原価率の見極めや販売導線の設計まで含めた“全体最適”が欠かせません。今回紹介したポイントを押さえることで、無駄なコストを避けながら利益を積み上げる仕組みが整います。まずは自社のブランド戦略に合ったOEMタイプを選び、利益率を意識した設計から始めてみてください。
🌐 (1)厚生労働省:化粧品のルール(薬機法)
→ 原料・広告表現・薬機法の話をする時に必ず信頼性UP。
🌐 (2)日本化粧品工業連合会
→ 化粧品の分類・安全性・製造基準の解説に使える。
🌐 (3)国民生活センター(消費者向け安全情報)
→ 化粧品トラブル・注意点の引用に最適。
🌐 (4)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
→ 薬事・審査・安全情報など専門性が爆上がり。
🌐 (5)JETRO(海外化粧品市場データ)
→ OEM海外展開の記事と相性が良い。









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